バイデン政権の健康政策上の課題 妊娠中絶禁止を大統領法令で廃止へ

【この記事の執筆者】バイデンニキ(twitter)

民主党が議会の過半数を占めているにもかかわらず、政党の分裂は続いているため、主要な医療法案を可決することは非常に困難と見られています。

大統領就任が正式に決まったバイデン氏には、トランプ氏の健康政策に関するさまざまな負の遺産が残っています。

バイデン氏がやるべきことには、複数の事項がありますが、以前の状態に戻すためだけでも、多大な労力と時間を必要とする見方が強まっています。

本記事では、バイデン政権が抱えるとされるトランプ氏の誤った健康政策から、負の遺産を回避する方法、1月22日に予定されている妊娠中絶禁止の大統領法令までお伝えしていきます。

バイデン政権が抱えるトランプの負の遺産「狂った健康政策の数々」

トランプ氏は、2016年の政治キャンペーンで最も注目を集めた健康関連の政策(処方薬の大幅な値下げなど)を実現できませんでした。

ですが、彼の政権は、行政機関を使用して国の医療システムに大幅な変更を加えました。

大幅な変更の多くは、民主党員、特にACA(医療保険制度改革)を妨害することを目的としたものになります。

医療保険制度をかいくぐり「安価で質の低い保険商品を推奨」

トランプ政権は、自分の保険を購入する人が、ACA(医療保険制度改革)のすべてのメリットをカバーしていない「質の低い保険商品」を認可しました。

そして、十分に条件をカバーしていない質の低い保険商品を、安価なプランを簡単に購入できるようにしています。

トランスジェンダーの保護を廃止

トランプ氏は、2017年2月にトランスジェンダーを養護する(公立学校で自由意志によるトイレ利用の権利)オバマ氏の通達を破棄しています。

さらに、トランスジェンダーの従軍を禁止する発言もしており、性別変更を禁じる法案も準備していました。

くわえて、医療保険制度の性差別禁止条約から、トランスジェンダーの項目を排除することにより、医師が公然と差別できるように改悪するのを試みていたのです。

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新政権がトランプの負の遺産に苦しむ理由

トランプ政権が残した健康政策に関する負の遺産は、なぜここまで大きな問題となっているのでしょうか。

主な2つの理由について、順番にお伝えしていきます。

連邦裁判所において反対陣営から異議申し立てが続くリスク

トランプ氏は、アメリカの歴史上に類がないほど、連邦裁判所で判決の否決を下されています。

2年で63回以上も否決されていますが、その理由のほとんどは、適切なプロセスを踏まえないことにありました。

政権を握っていた期間は、規制に対して数十回以上もの異議申し立てをしています。

そのため、バイデン政権は、同様に反対陣営からの異議申し立てが続くリスクを抱えています。

バイデン新政権には、「司法の再編を考慮すると同時に、非常に慎重な通知とコメントの規則制定が見られること」が求められているのです。

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複数の部門間で決定された政策であるため

問題を複雑にしているのは、多くの健康法案に関する規制が、保健社会福祉省だけでなく、労働・財務省を含む他の部門から共同で発せられている点です。

したがって、複数の部門間で調整が必要となり、決定までの時間が長くなる可能性があります。

大統領としての最初の仕事としては、パンデミックに関連するものが、健康政策よりも先に来る可能性が高いとみられています。

トランプ氏の負の遺産「健康政策」を回避するベストの手段とは

連邦裁判所の措置は、バイデン政権が厄介な規制プロセスを回避する上で役立つ可能性があります。

新政権が書き直したり廃止する予定をもつ規制が、すでに裁判所によって阻止されている場合、バイデン政権は、単にその判決に対して上訴しないことを選択することができます。

つまり、連邦裁判所の判決ではなくて、下級裁判所の判決のみを支持するのです。

とはいえ、法的な拘束力が弱い上に、誰かが介入する可能性を高めるため、確実な戦略とはいえません。

たとえば、トランプ政権時代の民主党の司法長官は、下級裁判所の判決のみを支持して動いた際に、ACA(医療保険制度改革)を守るために介入しました。

そのため、同じような戦略をとったとしても、同様に共和党の陣営から介入される可能性がある手段になります。

トランプ氏の政策を微調整していく案も

次期政権にとってもう1つの選択は、トランプ氏の政策を排除するのではなく、微調整していく方法です。

ジョージタウン大学の法学教授ケイティ・キース氏は、トランプ氏政権が立案した法案には、価格の透明性や処方薬に関するものを含め、イデオロギー的に中立な政策があると指摘します。

バイデン新政権は、イデオロギー的に中立な法案を書き直す施策を取ることで、同時に他の政策を進めることができるため、新政権の稼働への労力を節約できる見方があるのです。

新法案可決に伴い保険会社と医療従事者の政治的な闘争が予想される

新たに可決される予定の医療法案は、ほぼ確実に、施行された法律を再訴訟しようとする「保険会社と医療提供者の間」の巨大な政治的闘争が予想されています。

医療保険制度改革制度に基づいて保険証券を販売する保険会社は、バイデンが就任した直後に、保険証券の規則を見直して作り直す必要があります。

バイデン新政権には、健康政策に関連する法案に対して、就任直後から大きな注意力を働かせる必要があります。

1月22日に妊娠中絶禁止を大統領法令で廃止へ

1980年代以降、大統領が政党を変更するたびに、次期大統領の最初の行動の1つは、妊娠中絶のケア団体への外国からの援助を、開始もしくは廃止させることでした。

トランプ氏は、妊娠中絶反対派であり、外国から援助を受けることを禁止していました。

ですが、妊娠中絶賛成派のバイデン氏は、就任直後に関連法案を可決することが予想されています。

大統領就任日の2日後は、最高裁判所による中絶決定の記念日であるロー対ウェイド事件の日であり、法案可決を発表する良いタイミングとの見方があります。

【参照記事】
Wikipedia -ロー対ウェイド事件

まとめ

本記事では、バイデン新政権誕生に伴い、トランプ氏の健康政策に関する負の遺産から、次期政権が抱える引き継ぎの問題を明らかにしました。

質の低い保険商品の見直しや、妊娠中絶のケア団体への支援の開始、トランスジェンダーへの保護の見直しが、早急に求められています。

引き継ぎにあたっては、「反対陣営からの異議申し立て」「部門間での調整力」がカギとなります。

直近の話題としては、1月20日の就任直後に、ロー対ウェイド事件を記念として、妊娠中絶禁止を撤廃する法案の発表が予想されています。

【参照記事】

When Biden Takes Office, Undoing Trump’s Health Policies Won’t Be Easy

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